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[卒業生インタビュー] 麻生花帆さん 音楽研究科博士課程(邦楽囃子専攻)修了

2016.12.8

11月19日(土)にロンドンで開催されたExperience Japan Exhibition 2016における本学のブース出展を、現在ロンドンで研修中の本学の卒業生、麻生花帆さんにお手伝いいただきました。この機会に、ロンドンでの研修生活、今後の目標等についてお話を伺いました。

ロンドンに来たきっかけは?

文化庁の新進芸術家海外研修制度を利用して、一年間演劇の勉強をするためにロンドンに来ました。藝大では邦楽囃子を専攻し、博士号を取得しましたが、今回は、俳優として派遣していただいています。在学中から俳優としても活動していましたが、2008年から2013年まで、イギリスの演出家でテアトル・ド・コンプリシテを率いるサイモン・マクバーニー氏による『春琴』(谷崎潤一郎の『春琴抄』及び『陰影礼賛』が原作)に出演し、ロンドン、パリ、ニューヨーク、シンガポール、台湾などで公演しました。

研修の内容は?

私のアーティスト活動は、3本柱で成り立っています。それは、邦楽囃子、日本舞踊、そして演劇です。私は総合芸術に興味があり、音楽は音楽、踊りは踊り、芝居は芝居、美術は美術と切り離して考えるのではなく、トータルで魅せるものと考えています。実際に、自分が演出及び主演した舞台では、背景画の作成を油画の卒業生に依頼し、それを映像に取り込んで舞台背景に映写しながら芝居を行うような試みをしたり、私が着る衣装に作品を描いていただいたりしました。時には会場にお香を薫き染めたこともあります。それは、私が五感を使って楽しめる芸術を目指しているからです。この総合芸術の追求が、ロンドンでの研修テーマです。これまでにも、東京藝術大学美術館所蔵の『序の舞』(上村松園)のデジタルアーカイブを利用して、絵と私の舞とのコラボレーション作品を発表するなど、美術との交流にも関心があったのですが、総合芸術を追求するきっかけを与えてくださったのは、前学長の宮田先生でした。「9つの音色」という美術グループがあり、宮田先生をはじめ9人の異なるジャンルの芸術家が参加されていましたが、それぞれの作品がもつ空間を音と舞で表現するという形でコラボレーションさせていただきました。異なる分野との交流は、総合芸術を追求する中で、私が大切にしていることの一つです。

ロンドンに来てよかったことは?

ロンドンは非常に多国籍です。色々な背景や考え方を持つ人たちとアイディアを交換し合い、新しい視点に気付かされることも多く、とても刺激的です。母国の政治的背景に翻弄されながらも、逞しく生きている方に沢山出逢いました。日本に居たら出逢えなかった方々です。そんな方から発せられる一言一言の重みは、生涯忘れることが無いと思います。

藝大で学んだことがどのように生かされているか?

海外では、オリジナリティが求められます。藝大で日本のこと、日本の芸術を深く追求出来たことは、現在の支えであり強みであると感じています。また様々なジャンルの方と交流でき、多角的視野を身に付け、その関係を今でも継続して、卒業後も一緒に作品を作れていることは藝大生の強みです。

今後の目標は?

私は、江戸時代に作られた楽器を今でも大切に使っています。そこには、作り手が、そして歴代の使い手が、多くの先人が託した魂が込められています。演奏する度にその先人達の声が聴こえ、私を助けてくれている気がします。その大事に受継がれた心を、伝統音楽や伝統芸能を通して残していくこと、現代の感覚に合うように変化させながら、その神髄を世界に伝えることが自分の使命であると感じています。志の合う仲間たちと一緒に活動していけることはこの上ない喜びです。最近は自分にしか出来ない表現をと、その同志たちと共に、音楽や舞を取り入れた一人芝居と美術とで織りなす音楽物語絵巻に積極的に挑戦するなど、私自身の美意識に基づいた独自の舞台表現を展開し、国内外にて公演を重ねています。
芸術や音楽は、人の心を支えるものです。楽しい時、辛い時に心に寄り添う、その瞬間を作れることが表現者でありアーティストの醍醐味であると私は考えます。たった一人でも、ほんの一瞬でも、誰かの心を支える「時」を提供できたなら、表現者としてこれ以上嬉しいことはありません。最終的には、それを人生の終わりまで全うすることが表現者としての私の目標です。

藝大生へのメッセージ

何でも恐れず挑戦してほしいと思います。学生のうちは失敗が許されるのですから。また、失敗こそ次へのステップです。だからあえて、自分のできないと思うことにも挑戦してほしいです。できなくても挑戦することに意味があり、萎縮する必要はない、ということを知ってほしいのです。その時にできなくても、恥をかいても、それは簡単に成し遂げてしまったことよりも何百倍もの価値となり、自分の支えになります。挑戦すること、自ら踏み出すことが、今後勝ち抜いていくための鍵だと思います。そして自分の強みを持つことも重要です。それが何であってもいいのです。将来壁にぶつかっても、何かしら自分だけの強みがあれば人はリスペクトしてくれますし、それを武器に戦っていけるでしょう。

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麻生花帆さんのプロフィール
http://aso.kaho.jp/index.html