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「Far Away, So Close」インド国立デザイン大学 (NID) との写真プロジェクト

2017.6.14

基本情報

研修者:先端芸術表現科 教員と大学院修士課程・博士課程 合計5名
研修先:インド(西部グジャラート州アーメダバード・ガンディナガール)
研修期間:2016年9月24日 – 10月1日

海外研修の成果

美術学部先端芸術表現科の学生たちは、絵画、写真、映像、音楽、文芸、身体パフォーマンス、インスタレーションなど、これまでの美術の区分けにとらわれない様々なメディアを使った表現を学んでいます。今回はその中でも写真や映像を中心に扱う鈴木理策研究室の大学院生・博士課程5名と教員が、インド国立デザイン大学院(National Institute of Design: NID) ガンディナガール校を訪れ、写真デザイン科で学ぶ大学院生15名とそれぞれの教員とともに、お互いの制作過程や制作活動に新しい視座をもたらすことを目指して、交流プロジェクトを行いました。

交流プロジェクト初日は、藝大とNIDの参加学生が、英語で自分の作品についてのプレゼンテーションを行うことから始めました。社会的・文化的背景が異なる環境の中で初めて出会う相手に向けて自分の考えや作品について説明し、また相手の考えに耳を傾けるのは、大変貴重な機会となりました。英語を学内の共通語としているNIDの学生とは対照的に、藝大の学生たちには英語力の不足からコミュニケーションの難しさを改めて実感する様子も見受けられました。

二日目からは藝大とNIDの混成チームによるグループワークが始まりました。それぞれ3-4人のグループごとにインドと日本の写真家1名ずつの合計2名が割り当てられ、それぞれの写真家について調べ、相互に解説し合いながら、特徴、共通点、相違点について意見を交換しました。相手に理解してもらうためには、自分の言葉で、その写真家について考察することが求められます。リサーチや意見交換を通して、接点がないはずの日本とインドの写真家同士に共通点が見出されるなど、それぞれの写真家を新しい観点でとらえる機会となりました。

また授業の合間には、隣接するアーメダバード市内の建築物をめぐるウォーキングツアーに参加し、ムスリム寺院のJumma Masjidや、インド建国の父と呼ばれるガンディーの暮らした修道院などを訪れました。

また本学先端芸術表現科の教員による「日本写真史」の特別講義や、アーティスト・プレゼンテーションには、たくさんの学生や教員が集まりました。

交流プロジェクトの佳境では、「肖像写真」をテーマに、藝大とNIDの学生・教員がペアを組んでそれぞれのポートレートを撮影しました。撮影の際には、被写体となる人にその人が大切だと思う「誰か」のことを思い浮かべてもらいました。各ペアは事前にそれぞれのポートレート写真をどうやって創り上げるかを話し合い、大切な人は誰か、場所、服装、ポーズはどうするのがよいのかなどを相談しました。そして撮影されたものの中から選ばれた最終プリントに、写された人が、そのとき想っていた「誰か」への手紙を書いて、作品を完成させました。

この共同制作プロジェクトでは、「撮る人」「写される人」「想われる人」が、距離や時間を超えて気持ちの上でつながること、またそれらの写真を「見る人」が、その輪の中に手をつなぐように参加できることを目指しました。学生・教員22名による22枚のポートレートは、Far Away, So Close (遠く、とても近く)と題され、両国の教員たちの講評を経て、成果展示として発表されました。展覧会にはNID学長や学部長も含め、多くの来場者が訪れました。また展覧会図録を現地にて印刷・製本し、今回の交流プロジェクトの最終成果としました。

交流プロジェクト全体を振り返ってみると、NIDでは表現を社会的な活動としてとらえ、社会における必要性や訴求力を目指す教育を行っている印象を受けました。このことは藝大の参加学生にとって、異なる価値観として感じられたようです。日常とは大きく異なる環境で協働制作を行った経験を通して、個人が目指す表現について改めて見つめ直す、良い機会となったようです。語学力の必要性を実感したという声も多くあり、より具体的な目標へとつなげる、大変意義深い機会となりました。