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ASAP実施報告:東京・ソウル アートリサーチ・ワークショップ

March 01, 2023

アーツスタディ・アブロードプログラム(ASAP)とは、国際舞台で活躍できる優れた芸術家の育成を目的として平成27年度に開始した、学生の海外での芸術文化体験活動を促進する実践型教育プログラムです。国際経験豊富な藝大教員陣によるサポートのもと、参加学生自らが主体となり、海外渡航を伴う展覧会や演奏会、上映会、研修への参加、協定校への訪問等プログラムを実施します。

実施事業概要

事業名称:東京・ソウル  アートリサーチ・ワークショップ
実施者:国際芸術創造研究科
渡航先:韓国(ソウル)
参加学生数:6人
実施時期:2022年9月27日~9月30日(4日間)

成果概要

今年度は、韓国芸術総合大学(K-Arts – Korea National University of Arts)のイム・ミヌク(Lim Minouk)先生をカウンターパートとし「ポストコロニアリズムの再考」をテーマに共同ワークショップを行った。K-Artsは、東京芸術大学の提携校であり、大学院国際芸術創造研究科はこれまで、2019年に江陵(Gangneung)での共同のワークショップを行うなど交流を深めてきた。今回、ソウルでのフィールドワークやレクチャーを通じて、日韓の歴史や文化、植民地主義に関する理解を深め、さらに教員や学生同士のディスカッションを行うことで、今後の日韓のトランスナショナルなコラボレーションの可能性を探ることができた。

お互いの教員と学生同士の顔合わせを行い、オリエンテーションと懇親会を行った。

フィールドワークでは、南山の朝鮮神宮跡や元・西大門刑務所を中心に、韓国併合時代から残る建造物やモニュメントを見学し、日韓の歴史や文化を学んだ。

またソウル市立美術館(SeMA – Seoul Museum of Art)ではインディペンデント・キュレーターのアン・ソヒョン(Sohyun Ahn)先生を迎えてポストコロニアリズムの視点から韓国の美術史のレクチャーを行っていただいた。学生同士のディスカッションでは、「あいちトリエンナーレ2019」において、「平和の像」や「昭和天皇」など従軍慰安婦問題を扱った作品をめぐって大きな反対運動が起こったことを例に、戦争の記憶、戦争責任問題をめって議論を深めることができた。

今回のワークショップでは、日本と韓国の美術系大学で学ぶ様々な学生が意見交換を行い、互いの歴史を理解した上で、日韓のポストコロニアリズム問題に文化や芸術がどう向き合うべきかという問題を議論することができた。また、このワークショップをきっかけに、今後、大学間、学生間でワークショップや意見交換、シンポジウム、研究プロジェクト、展覧会、コンサートなどを開催するための継続的なネットワークを作ることができた。

体験記

  • First of all, I really appreciate University to allow exchanging thoughts with young
    curators/researchers and artists in Korea and Japan.
    All fieldwork places are related to modern history in Korea, but it was also profoundly
    linked to Japanese history. So it was a perfect chance to discuss historical and political
    relationship issues with Korea and Japan. In addition, all students have different
    backgrounds and nationalities, so it is an excellent chance to listen to various voices.
    Furthermore, K-arts students shared their artwork. It was beneficial to consider how
    historical issues and memory from our former generations, especially the historical
    relationship with Korea and Japan, affects contemporary art fields and young artists.
    It would be beneficial for my future projects. I hope that the ASAP project can continue for GA students. (Curation, postgraduate of GA, M2)

 

  • I am very grateful to have been given the opportunity to take part in this exchange
    between Japanese and Korean culture. It was a rare and very valuable chance to
    develop mutual understanding and to introduce upcoming contemporary artists and
    curators in East Asia, developing international connections that could be very useful
    in our future careers.
    The field trip destinations were steeped in the colonial history of Japan and Korea. It
    is a history I, personally, am removed from, and so I could learn about a history I
    didn’t know so much about. Having said that, there are similarities between
    colonialism in this context and my own European context, which was interesting for
    me to consider. I was curious to hear the voices of Korean students on the subject of
    colonialism.
    My personal highlight of the activities was seeing the K-arts students present their
    artwork. It was very insightful to see the development of contemporary art and young
    artists in Korea, and to consider how we could possibly collaborate.
    I hope that future GA Students also get the opportunity to partake in a similar
    exchange. (Curation, postgraduate of GA, M1)

 

  • 渡航前は韓国芸術総合学校やプログラム中に訪れる施設について調べたり、空き時間に行ってみたいアート施設をチェックしたりした。今回のテーマであるポストコロニアリズムは自分の研究には直接結びつかないが、高校時代に学んだ日本史・世界史から知識を掘り起こしてイメージは掴めるようにした。プログラム開始の数日前に渡韓したので、同じく早入りした学生と数日間にわたってソウル市内にあるアート施設を見学した。そのため、最新の韓国のアートシーンを肌で感じることができ、その感触がプログラム中に現地の学生と交流するのに役立った。
    プログラム内のフィールドワークはもう少しアート寄りの内容でも良かったのではないかと思うが、今まで目を向けてこなかった分野をどう美術館の文脈に取り入れるかを考えるのは良い経験となった。今回見学した施設の展示を踏まえて、歴史を展示することをテーマに藝大生チームでディスカッションした様子を教授や現地の学生に公開したのは新しい試みであったと考える。
    また、私自身作品制作を行うことはあるが、それを世間に公開したり他者にプレゼンしたりした経験がこれまでないため、今回の学生ポートフォリオ発表会は非常に参考になった。自分の作品のどの部分をハイライトして、何を伝えて人に注目してもらうか、その手法がそれぞれ異なっていて興味深かった。
    もちろん、キュレーター的観点からもこの先一緒に何かプロジェクトをしてみたいと思える学生に出会えることができたのは今後の財産になったと言える。
    今回のプログラムでは異国の地でアートと向き合い意見を発することを求められ、時にはどう言葉にして良いのか悩む場面もあったが、その経験を通してインサイダーとアウトサイダーとして観点が異なることに気づくことができた。総じて、普段の観光目的とは全く異なる旅となり、価値のある数日間だったと感じる。(アートプロデュース専攻修士1年)