ASAP実施報告:MusicAlpアカデミー(第2期)参加
March 03, 2023
アーツスタディ・アブロードプログラム(ASAP)とは、国際舞台で活躍できる優れた芸術家の育成を目的として平成27年度に開始した、学生の海外での芸術文化体験活動を促進する実践型教育プログラムです。国際経験豊富な藝大教員陣によるサポートのもと、参加学生自らが主体となり、海外渡航を伴う展覧会や演奏会、上映会、研修への参加、協定校への訪問等プログラムを実施します。 |
実施事業概要
事業名称:MusicAlpアカデミー(第2期)参加
実施者:音楽学部器楽科
渡航先:フランス(パリ・ティーニュ)
参加学生数:5人
実施時期:2022年7月29日~8月16日(19日間)
成果概要
本プログラムでは、フランス・サヴォワ州ティーニュ(Tignes)で、毎年夏に3つのセッション(期間)、トータル約1か月にわたって開催されている、ヨーロッパ有数の音楽講習会”MusicAlp”第2セッションに参加した。第2セッションはピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ハープ、室内楽の約20人の教授がクラスを持ち、また、教授陣の室内楽コンサート、受講生コンサートが開催された。
室内楽レッスンの様子
教授陣の室内楽コンサートの様子
本学玉井菜採教授のクラスはASAP5人を含む、総勢14人の受講生が在籍し、期間中に玉井教授の4回のレッスン、加えて音楽監督のDong-suk Kang(ドンスク・カン)氏のレッスンを受講。希望した学生は、現地で室内楽が編成され、ヴィオラのGilles DELIEGE氏(CRR Parisパリ地方音楽院講師)の指導を受けた。
クラスではトゥーヤン・フォン(Thuy-Anh Vuong)氏が伴奏ピアニストとして、受講生の演奏上のみならず、様々なサポートをして下さった。
8月8日にレッスン会場で開かれたクラスコンサートでは、受講生全員が演奏し、選ばれた数人が8月10日にティーニュオウディトリウム(Tignes Auditorium)で開かれた全体の受講生コンサートに出演した。
また、玉井教授は講師陣の一人としてティーニュオウディトリウムで8月3日にBeethoven:PianoTrio Op.70-1、8月7日にBartok:Contrasts を演奏。
8月10日に終了パーティーがあり受講証を受け取ったのち、11日にパリに向けて移動。
11日~14日の4日間、主にルーブル美術館、オルセー美術館、ベルサイユ宮殿などを見学。
フランスのアルプス、イタリア国境にも近い、標高2100メートルに位置するティーニュは、周りを山に囲まれた湖のほとりにある。美しい山々や澄み切った湖、清らかな空気、まずは日常から離れた大自然の中で音楽に取り組む感覚、感動は思った以上に新鮮であった。各地から集まった受講生や、親しみやすい教授陣の和気あいあいとした雰囲気の中、学生は最初から物怖じすることなく講習会に溶け込んだ。レッスンはすべて公開されており、聴講しながら意見交換をしたり、充実したレッスンを展開することができた。室内楽では最初すべてフランス語でリハーサルが進んだり、困ったこともあったようだが、他の受講生や教授の助けを借り、コミュニケーションをとることができたという。また、学ぶ環境が違う学生と接することで様々な価値観を知ることができた。今回初めて海外の講習会に参加した学生にとって、今後、講習会やコンクールに個人で参加したり、留学をするときに、今回の経験は最初の礎として有意義であったと確信する。
パリでは、夏休み期間で美術館等も込み合っており、入場予約を取るのに苦労し、希望したすべての美術館を回ることができなかったが、街を歩き、文化財の実物を間近で見て、感じることができ、その文化的背景を知ること、またフランスでの人々の生活や習慣を知ることが、今後の国際感覚を養ううえで、重要な経験となることと思われる。
ティーニュの町、左奥が、宿泊、レッスンに使われたホテル群
体験記
- 7/29-8/16までフランスで様々な経験をさせていただきました。私にとっては初めての海外だったので、作曲家が実際に生活していたその時の姿が今も残るヨーロッパに行くのはとても楽しみであり、実際に見たら何を感じるだろうかと胸を弾ませていました。MusicAlpアカデミーが開催されたティーニュは標高約2000メートルの自然豊かな場所です。ホテルのベランダからは山々を一望することができ、練習に行き詰まったらベランダに出て考える…そんな毎日を過ごしていました。セミナーでは、玉井菜採先生のレッスン4回、カン・ドンスク先生のレッスン1回を受けることができました。そしてほぼ毎日のように先生方のコンサートが開催されていました。朝から夕方にかけて同世代の友人たちのレッスンを聴講して刺激をもらったり、先生方のリハーサルの様子を見学させていただいたり、大自然を散歩をしたり、練習をしたり…。夜はコンサートへ行ったり、星を見に行ったり、友人たちとお話ししたり…。とても充実した時間を過ごしたのですが、今回のアカデミーに参加して自分自身の課題ができました。このアカデミーには、いろんな国から同世代の音楽を志す人が集まっていました。しかし、私の英語力のせいでなかなか話し合うということができませんでした。語学は勉強を続けるべきだなと強く感じています。そして8/11から8/15までパリ観光をしました。特にオルセー美術館が印象に残っています。絵が素晴らしいのはもちろんなのですが、その作品にあった壁の色、自然光の入れ方、配置…。美術館自体が芸術品というような印象を受けました。昔から姿を変えずに残る街並み、芸術家たちが残した数々の作品たち、それを必死に守ってきた人々、全てに感動しました。この経験を忘れずに、これからも私なりに勉強を続けていきたいと思います。(器楽科1年)
- 今回このMusicAlpに参加させて頂いたことで多くの学びがあった。まず、参加準備に当たってこの音楽セミナーに参加するということでより一層前向きな姿勢で実技活動に励むことができ、渡航前に受けた-コンクールでは自分の演奏において良いものを残すことができた。Music Alpセミナーでは、玉井菜採先生のご指導の元、様々な新たなる発見を得て、より一層自分と向き合えた。個人のレッスンだけでなく、他人のレッスンや、演奏を聴講して音楽を共有したり、様々な国、地域から来ている方々と交流することで自分の視野を広げ、より多くの引き出しを作ることが出来た。音楽をレッスンで学ぶのがセミナーの本来の目的ではあるのかもしれないが、プロの音楽家を目指す様々な人達と国際的に交流できる機会はそう簡単に得ることは出来ない。毎日が非常に刺激的だった。これらこそが国際セミナーの長所であり醍醐味であると思った。セミナーを終えた後は、パリにて観光をした。エッフェル塔やオルセー美術館、ヴェルサイユ宮殿、どれも美しく何度でも行きたくなるような場所だった。特にオルセー美術館の印象派の絵は見惚れてしまうほど魅力に溢れていた。絵は非常に音楽に似ていて、どのようなタッチで絵を描くか考えるのと音楽をイメージし、音楽を奏でるのと通ずるものがあると思った。絵と音楽は切り離せない密接な関係があると感じた。
どの観光場所も素晴らしかったが、最も感銘を受けたのは何ら特別なことがあるわけではない街中、地下鉄での日本とは全く違う文化の中にある生活だ。スーパーに行けば当たり前のように店員に挨拶した。短い時間の中の出会いでも自己紹介のように名前をお互い言い合う場面も多々合った。地下鉄に乗れば日本のようアナウンスはなくドアが閉まるし、基本仕事中でも仲の良い人がそばに来たら会話に没頭する。私は日本では体験しないコミュニケーションや文化の違いに最も感銘を受けた。日本とはどこか違う一見雑そうに見える習慣や態度、オープンな会話などの文化の違いが実は所々に小さな自由を生んでいてそれが幸せを生むのだろうと思った。文化の違いを肌で感じることができ、素晴らしい経験となった。(器楽科2年)
- 今回の活動を通して、映像や本で見るだけでなく、肌で感じ取ることの大切さを痛感した。パリ、ティーニュでの研修に先駆け、私はガイドブックやインターネットで地域の魅力やスポットを調べていた。その時点でも、パリの豪華絢爛さやティーニュの大自然に感動していたが、実際に足を踏み入れると、その魅力は何倍にもなって私の身に襲い掛かってきた。まず最初に訪れた凱旋門、シャンゼリゼ大通りはパリに来たことを実感させてくれるような、堂々たる威厳さえも見せつけられた。翌日向かったティーニュには、インターネットの世界には収まり切れていなかった雄大な自然があった。中でも1日に何十回も姿を変える湖は何度見ても美しかった。岩山を眺めながらの部屋での練習も初めての感覚で、演奏のスケールも広がりそうな気がした。土地だけではなく、バカンスに来ていた陽気で音楽好きなフランスの人々を横目に大好きな先生のレッスンを受講、聴講したり、先生方の素晴らしいコンサートを観に行くのも大切な経験となった。私は室内楽のレッスンも受け、ヴィオラの先生と海外の受講生と共にクラリネット5重奏を学んだが、開始早々ほぼフランス語で繰り広げられるレッスンにドイツ語専攻の私は戸惑った。しかし、音楽は言葉を超えるというのは本当で、単語はひとつも分からなくても先生のジェスチャーと音楽の移り行きで何が言いたいかは大抵理解することができた。12日間という長さではあったが、あっという間で充実したセミナーだった。セミナー後のパリ観光では、エッフェル塔、リュクセンブール庭園、ヴェルサイユ宮殿、オルセー美術館、ルーヴル美術館等歴史ある名所を巡った。特にヴェルサイユ宮殿は隅から隅まで美しく、当時のフランスが今よりさらに華々しかったことを想像させた。名所だけでなく、普段歩いた道までもが美しく心満たされる日々だった。この研修は必ずこれからの音楽に対する考え方に良い影響があると思う。(器楽科2年)