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ASAP実施報告:RAM(英国王立音楽院)と邦楽科との交流

March 03, 2023

アーツスタディ・アブロードプログラム(ASAP)とは、国際舞台で活躍できる優れた芸術家の育成を目的として平成27年度に開始した、学生の海外での芸術文化体験活動を促進する実践型教育プログラムです。国際経験豊富な藝大教員陣によるサポートのもと、参加学生自らが主体となり、海外渡航を伴う展覧会や演奏会、上映会、研修への参加、協定校への訪問等プログラムを実施します。

実施事業概要

事業名称:RAM(英国王立音楽院)と邦楽科との交流
実施者:音楽学部邦楽科
渡航先:オンラインで実施
参加学生数:6人
実施時期:2022年4月~12月

成果概要

渡航を断念し、オンラインによる邦楽および和楽器についての講座(プレゼンテーション)企画、制作を行い、またRAMからの作曲専攻大学院生Keting Sunさんを迎え、実際に作品を作っていただき検討するなかで、奏法や記譜法、楽器の可能性をいかに伝えるかを実践した。
萩岡松韻教授、萩岡由子講師が中心となり、邦楽専攻学生が、邦楽器および邦楽についてのプレゼンテーションを企画、作成し、英国の作曲科学生を対象に12月8日(木)18:00~20:00にオンライン(Zoom)講座を行った。プレゼンテーションの企画や資料作成を通して、日本の伝統文化をいかに伝えるかを考える過程で、将来の活動に繋がる興味関心を喚起できたのではと思う。プレゼンテーションの前には英語の語学指導も実施、英語で伝統音楽や文化、楽器を紹介するスキルアップにつながった。

オンライン講義

参加学生は6名、筝と尺八を中心に「①概論、楽器について」「②奏法、音律について」「③作品の実例と実演」の三つの柱に沿って萩岡由子講師、友常聖武助手の指導のもと、講座の企画と資料作成を行い、英語にてプレゼンテーションに臨んだ。藝大側参加者は大学内の2部屋および自宅からの参加、RAM側はLouise Drewett先生、Cydonie Bantingさん(作曲科のAdministrater)がホストとして、10名程度が聴講。

予め動画に撮っておいた実演はネットワーク速度の問題か視聴しづらく別途Youtubeのリンクで送付したり、また実際にライブで演奏する場面もあったがZoomの設定など基本的なところで反省点が多く発生した。

[実施概要]
・4~6月:オンライン会議、プロジェクト概要の打合せ
・7月:渡航の是非の検討、航空券の高騰、円安により渡航見合わせ決定
・8~9月:計画再構築
・9月前半:プレゼンテーションの講座の概要構築
・11月:資料、原稿作成及び英訳、語学指導
・12月8日(木):プレゼンテーション実施(RAM側からの提案で1回のみ実施)
・12月19~23日:RAM作曲専攻大学院生Keting Sunさん訪問受入

ウェルカム鑑賞会

萩岡由子先生の楽器講義

体験記

  • 元々日本の伝統音楽は日本人よりも海外の方々の方に需要があると思っていて、もし演奏をして文化を発信していく立場になったときには、まず海外の発信をどのようにしていくか考えるだろうと思っていたので、今回のイギリスからの留学生の方との交流はとても勉強になった。海外の方に向けて演奏をしておもてなしをするという経験も初めてで、芸祭などでの演奏とはまた違った緊張感があった。
    海外の方から見て和楽器のどういうところに魅力を感じるのかが気になっていたが、今回交流させていただいた方の反応を見る限りは、独特な「音色」を気に入ってくれていたように思えた。彼女は作曲をされている方だったので、曲を作る際に音色や、音色を変える技法をどのように活かしていくのかというところを特に悩んでいたように感じ、それを実際に演奏しながら試行錯誤をして、イメージにあった技法を見つけていく事が楽しかった。留学生の方の頭のなかにあるイメージが段々とアウトプットされていくのを目の当たりにでき、和楽器の表現の幅の広さや可能性をあらためて実感することが出来たという点でも嬉しかった。
    また、普段専攻の特徴上、古典的な曲をすることが多く、五線譜を見て演奏をするということ事態とても貴重な経験だった。今回、五線譜から箏譜に変換するという役割を任せていただけたが、その作業は今後の演奏活動においていきていくものだと思うので、忘れないでおきたい。
    今回の交流を通して、今後日本文化に興味を持ってくれた海外の方との交流の仕方を学ぶことが出来たので、この経験を糧に文化の発信の仕方を研究してみたいと感じた。(邦楽科3年)

 

  • 初めて海外の方へのレクチャーをさせていただき改めて慣れない言語での楽器説明が難しいことを認識いたしました。
    楽器の部分紹介もそうですが、邦楽特有の「間」の説明や「合奏形式」など日本語でも完全に言語化できない物を説明する事はとても良い体験になりました。
    また今回演奏資料として数曲映像を残し、演奏会形式で古典を中心とした曲を留学生の方に聞いていただきました。いつもとは違う緊張感の中で演奏する事も今後の活動で役に立つと思います。
    今後の課題ですが、まず留学生対面講義・ズーム講義で使用する際のレジュメの作りこみ・早期共有を徹底したいと思いました。
    箏・尺八の資料双方に言えることが、言語の言いかえに重点を置いているが故に図解など少なく視覚的に覚えにくい、という事でした。映像資料や海外学生の方の事前の勉強で大体のことは分かっていらっしゃるとは思うのですが、こちらから配布する資料があまりにも文字が多く理解が難しかったのではないかと思いました。
    留学生の方の作曲してくださった曲の合奏・試聴会の進め方も少しぎこちなさがあったと思います。
    ある程度合奏の形を作る、もしくは箏・尺八それぞれが全体の流れで演奏できる状態での視聴会を増やし、作曲者自身が想像していた通りに曲が運んでいるのか、曲想を共有できているかなど認識してもらう機会を増やして作品発表会へ向かってもらいたいと思いました。
    今後海外の方へ向けて演奏・レクチャーをする機会は増えるかと思います。今回の反省を生かし資料作成、音楽への理解を深めたいと思います。(邦楽専攻修士1年)