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ASAP実施報告:GEIDAI / the Academy of Fine Art in Wroclaw Joint Project “300km” – Contextual Practice and Humanitarian Aid

March 03, 2023

アーツスタディ・アブロードプログラム(ASAP)とは、国際舞台で活躍できる優れた芸術家の育成を目的として平成27年度に開始した、学生の海外での芸術文化体験活動を促進する実践型教育プログラムです。国際経験豊富な藝大教員陣によるサポートのもと、参加学生自らが主体となり、海外渡航を伴う展覧会や演奏会、上映会、研修への参加、協定校への訪問等プログラムを実施します。

実施事業概要

事業名称:GEIDAI / the Academy of Fine Art in Wroclaw Joint Project “300km” – Contextual Practice and Humanitarian Aid
実施者:美術学部絵画科油画 版画研究室
渡航先:オンラインで実施
参加学生数:7人
実施時期:2022年5月~2023年1月

成果概要

学生間の共同プロジェクト「300km」の当初の計画では、2019年にノーベル文学賞を受賞したポーランドの著名な作家オルガ・トカルチュクが本企画に提供したテキスト「300km」について、本学学生内およびヴロツワフの学生・教員と議論し、ポーランドへの旅行に向けて翻訳者の小椋彩氏と既定のテキストを基軸に協働することを予定していた。

しかし、現在も続くパンデミックによる学生の健康へのリスクと、法外な旅費の高騰により、参加学生がポーランド滞在の資金を捻出することが不可能になったため、残念ながら実現できなかった。

そこで、オンラインでの協働を強化し、共同制作した作品のプレゼンテーションやディスカッションをオンライン・ミーティングで行うこととした。

ヴロツワフ美術大学の学生 制作プラン発表・中間講評会

東京芸大の学生 制作プラン発表・中間講評会

このように計画を変更し、共同制作のあり方を見直すことが、結果的にこのプロジェクトの教育戦略の一部となった。学生たちには、代替となるプロジェクトや協力方法の創造に自主的に取り組むよう呼びかけた。
当初は、完成した作品をポーランドに持ち込む予定だったが、作品を双方向に輸送する方法については議論が必要だった。
そのため、パートナーたちの作品をここで「再現する」という選択肢を検討し、作家性や現代の著作権の問題、アート作品の真正性、オリジナリティの要件、アート作品を改変する権利といったトピックについて議論することとなった。

テーマとなる規定のテキストと個々の創作プロセスについては、何度もオンラインミーティングを行ったが、制作したアート作品を東京とヴロツワフに配置する方法については、ヴロツワフのパートナーと後で調整するために、まず大学内で話し合う必要があった。
このプロセスにより、参加者全員が、国際的なグループプロジェクトの運営に関する見識と経験を得ることができた。参加者全員が、このようなタスクに伴う要件、起こりうる問題や障害について、直接知識を得る機会を得た。

この経験は、今後、本校の学生が国際的なプロジェクトに参加する際に貴重な財産となると考える。また、完成した作品だけでなく、制作のさまざまな段階で作品を発表することで、参加したすべての学生の、アーティストとしての創造的なプロセスを理解することができた。これらの活動には、アート作品が関連付く共通基盤として規定のテキストを活用したため、すべての学生が直接的に参加することができた。

言語と視覚のコミュニケーションを翻訳する必要性は、探索とインスピレーションの場となった。学生たちは、国際的で異文化的な創造環境を経験することができ、将来、国際的なプロジェクトに自信を持って臨むことができるだろう。

最終講評会

2023年2月に東京とヴロツワフで成果展を行い、3月中に作品とそのプロセスを記録したカタログを出版する予定である。
また、ヴロツワフにおいては、2023年9月に作品とカタログを展示する2回目の機会を設けることを計画している。

体験記

  • オルガ・トカルチュクの著書『逃亡派』から抜粋された文章を元に、新たな作品を構築し直すと同時に、ヴロツワフの学生と同じ課題に取り組むというプロジェクトに参加。私は別の研究室に所属しているが、過去にワルシャワやクラクフに滞在する中でポーランドの精神性に興味を持ち、個人的に文化や歴史の独学を進めていたため、是非現地の同年代とリアルタイムで意見を交換しながら自身の制作の新たな切り口を見つけていきたいと考え、プロジェクト参加を試みた。私は、今回のプロジェクトにて配布されたテキストを元に新たな物語を制作し、それらに付随する絵を描き始め、単に二次創作で終わらせないものを制作するため、テキスト中のあるキーワードからストーリーを構築し直す作業を進めた。私が再構築したテキストコンセプトは、まだ出会ったことのない友達への手紙である。配布テキストの重要なキーワードでもあり、今回のプロジェクトのタイトルにもなっている300kmという数字に目をつけ、300km先にいる“誰か”に宛てて絵手紙を書いていった。これまでの制作では、既存のテキストや作品から2次的にものづくりをすることは滅多に無く、非常に新鮮な気持ちで取り組むことが出来たと感じている。一方で不安もあり、解釈が間違っていたり、アプローチの仕方がズレていないかと常に自問自答しながらの制作が続いた。反省点としては、せっかくヴロツワフの学生と交流する機会を与えていただいたのにも関わらず、想像より積極的に現地の学生達とセッションすることが出来なかった点である。また、新型コロナウイルスの影響でヴロツワフでの展示会のための渡航が出来なくなってしまったことに関しては、極めて残念に思う。しかし、zoomやSNS等で彼らの作品を十分に見ることができ、非常に洗練された成果物を目の当たりにしてたくさんの刺激を貰うことが出来た。今後、プロジェクトの集大成としての展示会とアーカイブ制作を控えているため、どの様な状況になったとしても臨機応変に最後までモチベーション高く取り組んでいき、今回に限らずこのようなプロジェクトには積極的に参加していきたいと考えている。 (版画専攻修士1年)

 

  • During this project we had the chance to learn about a text that has been honoured with the Nobel prize for literature from Poland which was a very special and meaningful way to get to know the Polish students in Wrocław. At the same time as the book addresses displacement, we were reminded of the struggle facing Ukrainian students who also joined the project. We had regular meetings with students at the Wrocław campus to develop our ideas for a joint exhibition. The idea of an exhibition at the same time in two different locations is meaningful for the text we were working with and also for the medium of printmaking that allows a work to exist in two spaces at the same time through its multiple-yet-original nature. (Printmaking, postgraduate of Fine Arts, D1)