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【レポート】留学生と在校生のためのオンライン日英プレゼンテーションチャレンジ 2020

December 20, 2020

令和2年12⽉16⽇、グローバルサポートセンターでは留学生と在学生の交流イベントとして「オンライン日英プレゼンテーションチャレンジ」を開催しました。
学生たちが母国語以外で自分の専門について発表するという企画で、全学生向けに発表者を募集したところ、学年・学部・専攻・出身国もさまざまな6名がこの発表に手を挙げてくれました。

開催当日までに、添削希望者にはグローバルサポートセンターの教員が事前に原稿を添削し、本番では自信をもって発表してもらえるように準備を進めました。

当日、はじめにグローバルサポートセンター特任講師の石田恵里子先生による開始の挨拶がありました。
続いて、今回講評をお願いする5名の先生方の紹介です。

今回の講評には、美術学部准教授の荒木夏実先生、グローバルサポートセンター特任教授の井谷善惠先生、音楽学部グローバルサポートセンター特任准教授の齊藤佐智江先生、グローバルサポートセンター特任准教授の横田揺子先生、映像研究科特任助教のヤマモト・アン先生にご参加いただきました。

また、参加者からのコメントや質問はZoomのチャットと「Slido」にて集めました。

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発表の1人目は、美術学部絵画科油画専攻3年生の奥村研太郎さん。
自身が創作で直面している葛藤をテーマに、時系列に4つの作品を紹介してくれました。
1つ目は「Brave New World」という小説をベースとした2つのシリーズ作品で、情報量とグロテスクさの狂気、鮮明さなどを表現したとのことでした。2つ目は「Name of Life」という作品で、これは印刷物と小さな彫刻物との関係の不明瞭さについて表しているそうです。3つ目の「The Code of Life & Death」では生命について考えたかったが、祖母の死によってアプローチが変わったと話してくれました。4つ目の作品「森森流熵」は、現在も制作中です。
講評の荒木先生からは、作品は哲学的で見た目も興味深いとの意見に続き、作品にPCではなく手を使うことが大切である理由についての質問や、今後の方向性についての質問がありました。マニュアルの手法で社会の狂気を表現したい、そして今後はデジタルとマニュアルの手法を混在させての作品作りに惹かれると答えてくれました。

2人目は音楽学部邦楽科琴2年生の鹿島千苑さん。
東京藝術大学附属高校入学から学部2年生である現在までの5年間で、いかに人生が変わったのかと、その重要な下記6つの出来事について発表してくれました。
講評の齊藤先生からは、琴という楽器について一言でどう説明するか、という質問や、西洋音楽でも共通して言える内容があるので今後は日本文化ならではのことをもっと掘り下げても良いのではとの意見を頂戴しました。

3人目は美術研究科文化財保存学専攻保存修復博士課程2年生の馬明新さん。
プレゼンテーションのテーマは、博士課程の研究である大学美術館の作品の復元模造について。復元のためにオブジェクトの観察を行うところから、材料を知るために5つの科学的研究手法を行い、復元の実践として実際に細かい作業を行って完成、という流れに沿って紹介してくれました。
講評の井谷先生からは、科学的で論理的だった、という意見に続き、未だ明確に定義されていない専門用語の翻訳についても、研究を通して翻訳に挑戦する良い機会では、との意見をいただきました。また、聴講でご参加いただいた漆芸保存修復の奥久保先生からは、材質が銅であったことの発見や再現する作業をやり遂げた点についての評価や、学校の作品の復元であるために今後作品として出ることはないものについて英語で発表する機会を得られてよかったとの意見を頂戴しました。

4人目は音楽学部楽理科3年生石井あきさん。
バルトークを例として、民族音楽の採譜についての研究発表をしてくれました。
楽譜を譜面にする方法は世界中さまざまな方法がありますが、なかでも聞いた音楽を記す採譜には「Prescriptive Music Writing(規範的採譜)」と「Descriptive Music Writing(記述的採譜)」の2種類あり、バルトークは後者を採用しているそうです。Descriptive Music Writingの場合、完璧には書き残すのは難しいがfolk musicのリサーチにはとても有効とのことです。
講評の横田先生からは、プレゼンテーションの構成がしっかりして分かりやすかったという意見に続き、バルトークが採譜に言葉を使ったのか、という質問や、採譜された楽譜をもとに昔の民族音楽を今と比較することはあるのか、また、今後録音機によって民族音楽などの記録が容易になった場合に採譜がどのような意味をもたらすか、についての質問がありました。

5人目は国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻博士課程1年生のアンジェラ・ロンゴさん。
日本のロボットアニメにおける美的構成の進化をテーマに、特撮によるコラボレーションの事例として、ストップモーションアニメから、アーティストやデザイナーのコラボレーションによって生まれたゴジラ、円谷プロや手塚治虫の特撮アニメなどの事例を紹介してくれました。今後の研究では、日本におけるアナログとデジタルの混在する映像制作の歴史を描きつつ様々な分野から現代日本のデジタル作品にどのような影響を与えたか考察していくそうです。
講評の荒木先生からは、そもそもこの分野に興味をもったきっかけについてや、研究方法についての質問がありました。研究のきっかけは幼少期にブラジルでアニメーション特撮の番組を見た経験で、今後は東京でアニメ特撮の歴史を保存研究するNPO団体へのリサーチを予定しているそうです。
また、アニメーション科のイラン先生からは、まず歴史を正確に捉える必要があるという点と、CGが主流になった現在、それまでの各国の独自の発展がCGによって同じスタートラインに統一されたという問題提起をいただきました。

最後は美術研究科先端芸術表現専攻1年生好光義也さん。
まずは自己紹介として自分のバックグラウンドについての説明があり、取手に移住するまでの作品についての紹介と分析について発表。そこから2020年春に藝大大学院に入学して日本や世界の各地で活動しようとした矢先に新型コロナウィルスの感染拡大によって自粛を余儀なくされ、現在は取手を「移住先」と捉えて地域との相互関係を持つ作品を創作しているとの内容で作品を紹介しました。今後は多岐にわたるアイデアを実行し取手でソロアートフェスティバルをやりたいとのことです。
講評のアン先生からは、個人の作品についての興味深いプレゼンであり、みんな生活が変わったなかで、その影響をアーティストとして作品にインスピレーションを得たのは素晴らしいとコメントを頂戴しました。また、アートフェスティバルについてのどのような方法を考えているか?という質問に対しては、取手の各所での展示やバーチャルスペースでの展示、1つのスペースでアーカイブを集めて展示するなど、3つの方法を考えている、とのことでした。

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全員の発表のあとは、講評の先生方から全体の発表に向けたコメントをいただきました。
井谷先生:聴衆が英語話者ではない場合は難しい単語などをゆっくり話すこと、またプレゼンの文字の大きさや画面の配色など、聞き手に配慮した発表を心がけましょう。
荒木先生:プレゼンテーションの内容について知らないことも多くて興味深く、特に馬さんの発表のように普段目にしないものを見せてもらえるのは素晴らしい。
斎藤先生:普段音楽学部にいると分からない美術学部での研究についてなど興味深く聞かせていただいた。それぞれのパワーポイントのデザインの工夫も見られたので良かった。
横田先生:美術の分野については知らないことが多く、特に奥村さんの作品が生まれてくる過程や、好光さんの生活自体が作品に結びつく様子、また馬さんの復元までの過程などを知ることで普段目にしたものの背景を考えるようになった。
アン先生:プレゼンテーションはとてもわかりやすくて良かった。言語にかかわらず、オンラインであっても目線は原稿ではなく、参加者とのアイコンタクトを心がけましょう。

英語や日本語での発表が初めてだったという学生の方も、添削を受けてから発表ができるので自分の発表について改善点を知る良い機会になりました。
興味がある方は次回の開催にぜひ手をあげてみてください。
※次回の開催については、決まり次第GEIDAI X GLOBALにてお知らせします。

(グローバルサポートセンター 川添)