GxGAbout

Shared Campus 関連プログラム体験記Programs related to Shared Campus

Tropical Lab 

Shared Campus で藝大と同じくフルテーマパートナーとして参加しているシンガポールのLASALLE College of the Arts が毎年  7 月末から 8 月初旬に、

シンガポール現地で 2 週間開催する art campがTropical Labです。

毎年 20 名以上の学生 artist が招待を受けた加盟大学から、またシンガポールで、あるいは国際的に活躍するartist も多く参加するイベントです。

この art camp の目的は世界中から集まった学生や artist 同士の交流や共同創作活動などを通じて、アートに対する新たな視点や、思考法を広げ、創作活動意欲を刺激することにあります。

Tropical Lab については、過去実施回を紹介した動画(第 13 回実施時の様子)が YouTubeにアップされていますので、ご関心のある方は参照ください。
Tropical Lab 13: Erase – YouTube

2023年度体験記

体験記/Reports 

参加プログラム Tropical Lab 17th
参加日程  2023年7月20日-8月4日
参加形式 現地参加(シンガポール)
氏名 芥川 真也
所属 映像研究科映像メディア学専攻博士後期課程2年

私が参加したプログラム「トロピカル・ラボ」はアーティストのMilenko氏が代表を務める国際的なアート・キャンプで、

本学を含む世界中の芸術大学に籍を置くアーティストがシンガポールに集合し、現地でフィールドトリップ・制作を行い最終成果として

Lasalle College of the Arts McNallyキャンパス内のギャラリーで展示を行いました。参加者の出身国はスロベニア、ルーマニア、ハンガリー、チェコ、アメリカ合衆国、インド、グアテマラ、

オーストラリア、シンガポール、韓国、日本、中華人民共和国、ドイツ、イギリス、スイス、ブラジル、インドネシアと国際色豊かなキャンプとなり、

私にとっても東南アジア・北米・西欧だけでなくインド・東欧出身のアーティストたちとも交流でき貴重な経験となりました。

一般的なシンガポール滞在と異なり、このプログラムはMilenko氏(旧ユーゴスラビア出身)をはじめ東欧・インドを出自に持つ方が多く運営に関わっているため、

とても多角的で開放的なキャンプとなりました。

今年度は「Playgrounds」をテーマとし、ラサール大学の総長でもあるDr.Venka氏がエディターを務めるAnnual ART JOURNAL 「ISSUE」も同じテーマを扱うなどアートの実践と理論が密接に連動しており、

諸々の進行・連動もとても洗練されたものでした。
トークショーも行われ、本展示のキュレーターを務めたHajnalka Somogyi氏は参加型・社会に関与する芸術について語り、

Tony Godfrey氏(本学元教授の木幡和枝先生が邦訳した「コンセプチュアル・アート」の著者)も登壇し、

Hajnalka氏と特にドクメンタ・スキャンダル(インドネシアのルアンルパがディレクターをつとめたドイツのアート・イベントで、Taring Padiの作品が反ユダヤ主義と捉えられるなど、

現地への配慮に欠けているとみなされる作品・活動が多々あった)についてや、展示とテクストの関係(ギャラリーで読むことを想定されてない膨大な量のテクスト・情報が作品として展示される風潮)

などについて、活発な討議が行われました。シンガポールでは諸外国人と直接対話できる機会が当たり前のようにあり私も気が楽でした。

日常に多様な文化的背景を持つ人々と分け隔てなく関わりを持つことができる環境は芸術表現にとって重要だと改めて感じました。

キャンプ前半では参加者が自己紹介を兼ねプレゼンテーションを行い、活発な意見交換が行われました。

私自身ゲスト講師の仕事をすることがあるので、他のアーティストの発表に対してどのような質問をすれば興味深い返答を引き出すことができるか、

質問の仕方の練習を兼ねて発表者に質問を多くすることができて良かったです。

キャンプ後半から参加者はスタジオ入りし、各々制作に入りました。私は予定通りシンガポールの特定の公園でピクニックを楽しむミャンマー季節労働者について作品の制作を始めました。

この題材は昨年度シンガポールでリサーチを行い構想したもので、また今回も何らかの出来事に遭遇し発想を得るため粘り強くリサーチ現場にいました。

これといった収穫がなく諦めかけたところ、ツアーガイドが大勢の観光客を連れてバスから降りてきて、私はその群衆に巻き込まれる形でいっしょにツアーに参加する形となりました。

このバスガイドは理想的な美しいシンガポールの景観を観光客に見せようと努めるのですが、当公園は酒を飲み野外カラオケを楽しむ数百人のミャンマーの若者に占められていて、

ガイドは苦々しく彼らミャンマー人の存在について観光客にガイドをしていました。私はこの出来事から見える関係性を創作に応用しました。

私の作品はキュレーターとのミーティングを経て、当初はインタラクティブ・インスタレーションとして制作を進めていたのですが、

残念なことに途中新型コロナウィルス感染症に罹患してしまいスタジオ・ギャラリーへの立ち入りができなくなりました。

私は大学の指針に従いホテルに隔離され、キュレーター、インストーラーとリモートでやり取りすることになりました。

元々制作を進めていた作品プランは現場での細かい調整が必要なインタラクティブ・インスタレーションで、私本人が立ち入れない状況ではうまくいかないリスクがありました。

そこでシングル・チャンネルのビデオアート作品に切り替えリスクを回避した代替案をキュレーターと話し合い決め、無事仕上がりPraxis Spaceギャラリーで発表しました。

コロナ罹患は初めてで、1週間食事がほとんど喉を通らず、体調が悪く制作に集中することが難しい残念な状況となってしまいましたが、ともかくも作品を仕上げ無事展示することができて良かったです。

他の参加者で罹患した方が複数人いましたが、私だけ最終日まで陽性反応で、オープニングにも出られず大変残念でした。

発表した作品はビデオアート作品としては意外と気に入ってはいるものの、観客が題材へ感覚的に関わっていくことを促す元々のインタラクティブ・アートを展示公開できなかった悔しさから、

日本に帰国した現在元々のプランのインタラクティブ・アートを再現制作しています。

他に苦労したこととしては、日本によるシンガポール占拠の歴史と向き合うことでした。

私の作品がEsplanade Parkを舞台としていることもあり、今回のシンガポール滞在制作に向けて、戦争の記憶について集中的に多くの英語論文を読み込み研究してきましたが

本当に気が滅入ってしまうものでした。

本学創設者の岡倉覚三の書籍がC.Boseへ与えた影響とその後のミャンマー・インド独立の関連についても研究していたのですが、

リー・クワン・ユーの自伝やDr. Blackburnらシンガポール国立大学の教授たちなどによる戦争の記憶への研究などの重さに圧倒され、形にすることは断念しました。

しかし今まで私が知らなかった歴史を多角的に学ぶことができ、芸術への昇華は今後の課題ですがまずは視野を広げることができ良かったです。

本キャンプでもフィールドトリップとして日本軍が捕虜収容所として用いていたSaint john’s islandへのボートツアーが行われ、

帯同したツアーガイドは日本軍の蛮行(人間チェスなど)を重点的に参加者に説明していました。

シンガポール華僑粛清事件などアジアでの日本による戦争犯罪に対して、緊張感を持って継続して学んでいかないといけないと改めて感じました。

Tropical Lab 

Tropical lab is an art camp organized in Singapore from the end of July to the beginning of August, during 2 weeks, by LASALLE College of Arts.
LASALLE College of the Arts is a full theme partner institution of Shared Campus same as Tokyo University of the Arts.

In this art camp, more than 20 student-artists from Institutions invited by LASALLE College of the Arts participate and Singaporean local and international artists also participate in this art camp every year.

The aim of Tropical Lab is to expand the views of the participants, to exchange experiences, and to stimulate creative thinking through a collaborative approach.

In addition, to create a positive environment that will stimulate and cultivate minds, imaginations, emotional(intuitive) consciousness and cultural sensibilities of the emerging generation of students of art.

With regard to Tropical Lab project, a video which records past art camp (13th edition) is on YouTube. If you have an interest in it, please refer to the following URL link to see the referential video.
Tropical Lab 13: Erase – YouTube

Report in 2023

体験記/Reports 

*The report below is written in Japanese

Program Tropical Lab 17th
Period of program  From 20th July 2023 to 4th August 2023
Mobility of participation In person (Singapore)
Participant’s name Akutagawa Shinya
Course at Geidai Graduate School of Film and New Media, Department of New Media, Doctoral course 2nd year

私が参加したプログラム「トロピカル・ラボ」はアーティストのMilenko氏が代表を務める国際的なアート・キャンプで、

本学を含む世界中の芸術大学に籍を置くアーティストがシンガポールに集合し、現地でフィールドトリップ・制作を行い最終成果として

Lasalle College of the Arts McNallyキャンパス内のギャラリーで展示を行いました。参加者の出身国はスロベニア、ルーマニア、ハンガリー、チェコ、アメリカ合衆国、インド、グアテマラ、

オーストラリア、シンガポール、韓国、日本、中華人民共和国、ドイツ、イギリス、スイス、ブラジル、インドネシアと国際色豊かなキャンプとなり、

私にとっても東南アジア・北米・西欧だけでなくインド・東欧出身のアーティストたちとも交流でき貴重な経験となりました。

一般的なシンガポール滞在と異なり、このプログラムはMilenko氏(旧ユーゴスラビア出身)をはじめ東欧・インドを出自に持つ方が多く運営に関わっているため、

とても多角的で開放的なキャンプとなりました。

今年度は「Playgrounds」をテーマとし、ラサール大学の総長でもあるDr.Venka氏がエディターを務めるAnnual ART JOURNAL 「ISSUE」も同じテーマを扱うなどアートの実践と理論が密接に連動しており、

諸々の進行・連動もとても洗練されたものでした。
トークショーも行われ、本展示のキュレーターを務めたHajnalka Somogyi氏は参加型・社会に関与する芸術について語り、

Tony Godfrey氏(本学元教授の木幡和枝先生が邦訳した「コンセプチュアル・アート」の著者)も登壇し、

Hajnalka氏と特にドクメンタ・スキャンダル(インドネシアのルアンルパがディレクターをつとめたドイツのアート・イベントで、Taring Padiの作品が反ユダヤ主義と捉えられるなど、

現地への配慮に欠けているとみなされる作品・活動が多々あった)についてや、展示とテクストの関係(ギャラリーで読むことを想定されてない膨大な量のテクスト・情報が作品として展示される風潮)

などについて、活発な討議が行われました。シンガポールでは諸外国人と直接対話できる機会が当たり前のようにあり私も気が楽でした。

日常に多様な文化的背景を持つ人々と分け隔てなく関わりを持つことができる環境は芸術表現にとって重要だと改めて感じました。

キャンプ前半では参加者が自己紹介を兼ねプレゼンテーションを行い、活発な意見交換が行われました。

私自身ゲスト講師の仕事をすることがあるので、他のアーティストの発表に対してどのような質問をすれば興味深い返答を引き出すことができるか、

質問の仕方の練習を兼ねて発表者に質問を多くすることができて良かったです。

キャンプ後半から参加者はスタジオ入りし、各々制作に入りました。私は予定通りシンガポールの特定の公園でピクニックを楽しむミャンマー季節労働者について作品の制作を始めました。

この題材は昨年度シンガポールでリサーチを行い構想したもので、また今回も何らかの出来事に遭遇し発想を得るため粘り強くリサーチ現場にいました。

これといった収穫がなく諦めかけたところ、ツアーガイドが大勢の観光客を連れてバスから降りてきて、私はその群衆に巻き込まれる形でいっしょにツアーに参加する形となりました。

このバスガイドは理想的な美しいシンガポールの景観を観光客に見せようと努めるのですが、当公園は酒を飲み野外カラオケを楽しむ数百人のミャンマーの若者に占められていて、

ガイドは苦々しく彼らミャンマー人の存在について観光客にガイドをしていました。私はこの出来事から見える関係性を創作に応用しました。

私の作品はキュレーターとのミーティングを経て、当初はインタラクティブ・インスタレーションとして制作を進めていたのですが、

残念なことに途中新型コロナウィルス感染症に罹患してしまいスタジオ・ギャラリーへの立ち入りができなくなりました。

私は大学の指針に従いホテルに隔離され、キュレーター、インストーラーとリモートでやり取りすることになりました。

元々制作を進めていた作品プランは現場での細かい調整が必要なインタラクティブ・インスタレーションで、私本人が立ち入れない状況ではうまくいかないリスクがありました。

そこでシングル・チャンネルのビデオアート作品に切り替えリスクを回避した代替案をキュレーターと話し合い決め、無事仕上がりPraxis Spaceギャラリーで発表しました。

コロナ罹患は初めてで、1週間食事がほとんど喉を通らず、体調が悪く制作に集中することが難しい残念な状況となってしまいましたが、ともかくも作品を仕上げ無事展示することができて良かったです。

他の参加者で罹患した方が複数人いましたが、私だけ最終日まで陽性反応で、オープニングにも出られず大変残念でした。

発表した作品はビデオアート作品としては意外と気に入ってはいるものの、観客が題材へ感覚的に関わっていくことを促す元々のインタラクティブ・アートを展示公開できなかった悔しさから、

日本に帰国した現在元々のプランのインタラクティブ・アートを再現制作しています。

他に苦労したこととしては、日本によるシンガポール占拠の歴史と向き合うことでした。

私の作品がEsplanade Parkを舞台としていることもあり、今回のシンガポール滞在制作に向けて、戦争の記憶について集中的に多くの英語論文を読み込み研究してきましたが

本当に気が滅入ってしまうものでした。

本学創設者の岡倉覚三の書籍がC.Boseへ与えた影響とその後のミャンマー・インド独立の関連についても研究していたのですが、

リー・クワン・ユーの自伝やDr. Blackburnらシンガポール国立大学の教授たちなどによる戦争の記憶への研究などの重さに圧倒され、形にすることは断念しました。

しかし今まで私が知らなかった歴史を多角的に学ぶことができ、芸術への昇華は今後の課題ですがまずは視野を広げることができ良かったです。

本キャンプでもフィールドトリップとして日本軍が捕虜収容所として用いていたSaint john’s islandへのボートツアーが行われ、

帯同したツアーガイドは日本軍の蛮行(人間チェスなど)を重点的に参加者に説明していました。

シンガポール華僑粛清事件などアジアでの日本による戦争犯罪に対して、緊張感を持って継続して学んでいかないといけないと改めて感じました。